みなさんこんにちは。雲南市の北湯口です。
新型コロナの5類移行後、初めての年末年始。この時期ならではの家庭・地域行事も復活し、人や地域とのつながりも戻って、久しぶりの再会や新たな出会いを喜んだ人も多いのではないでしょうか。過ごし方は人それぞれですが、身近な人や大切な人と過ごすことの多い年末年始は、自分自身のさまざまなつながりやその大切さを1年で最もよく実感できる貴重な期間と言えるかもしれません。
コロナ禍がようやく落ち着きを見せつつある一方、世界中で紛争や異常気象による自然災害が多発しており、不安定な社会情勢は続いています。ただただ平和と安全を祈るばかりですが、できることがあるとすれば、身近な人や自然を普段から大切にすることでしょうか。ごく当たり前のことをいつも以上に大切にする。そんな1年にしていきたいと、気持ちを新たにしたところです。
さて、今回は、どのような社会参加が介護予防に効果的なのかについて紹介していきます。
それではよろしくお願いいたします!
まずは身近な社会参加から
高齢期に人との交流機会が減ると、社会的フレイル(=つながりの希薄化による虚弱化)に陥ってしまい、要介護状態に移行しやすくなります。加齢に伴い気力や体力が減退し、人と会うことや外出が億劫になり、さらに気力や体力が低下して、ますます交流や外出機会が億劫に…。こうした負の連鎖を断ち切るためにも、高齢期にはできるだけ人と関わり合える社会的な活動に参加すること―いわゆる「社会参加」―が大切です。例えば、買い物や近所へのお散歩、友人・知人と出かける、病院への定期通院、自治会決して特別な活動ではなく、多くの高齢者にとって身近な社会参加と言えます。
効果的な社会参加トップ3は?
どんな形であれ、自分にあった社会参加が何か一つでもあることが大切です。それを前提とした上で、特に介護予防に効果的と言われている社会参加をいくつか紹介します。図1をご覧ください。これは、65歳以上の日本人男女1万2951人を4年間にわたって追跡し、どういった社会参加が、将来(4年後)に要介護状態になる危険性を低下させていたかを調べた研究です。グラフの縦軸は「危険性」を表し、縦の棒が低いほど要介護になりにくい活動として見ることができます。そして介護予防に効果的な社会参加のトップ3は、「運動」「趣味」「町内会」でした。その他の活動は、要介護の危険性を下げることも上げることもなく、統計学的にみても有意な関係性は認められませんでした(その活動への参加は要介護状態に影響していなかった)。
運動×つながり
さまざまな社会参加のうちで運動のグループ活動への参加が最も要介護状態になりにくく、その参加者は、不参加者に比べて要介護状態になる人が34%も少なかったという結果でした。運動そのものの効果という面もありますが、グループでの活動により社会的なつながりが育まれている面も相まって、健康効果がより高まった可能性があります。「運動×つながり」が、最も有効な社会参加の組み合わせと言えそうです。
普段の活動も効果的
また、「趣味」や「町内会」といった、一見、健康に直接的には寄与しそうにないグループでの活動でも、介護予防の効果がありました。まさに社会的つながりが介護予防に効果的であることの証左と考えられます。この結果は、仲間と趣味に取り組むことを通じた「生きがいづくり」や、身近な人と力を合わせる「地域づくり(自治)」の意義も高めてくれる知見と言えます。運動が好きじゃなくても、趣味の会ならだいぶ参加のハードルが下がります。町内会での定例集会や清掃活動などは、欠かせない活動と分かっていても仕事や家庭で忙しいなかでは負担に感じる面も多いかもしれません。ただ、将来の健康投資の一つと考えれば、その負担も少しは和らいだりしないでしょうか。
これから、地域の人が寄り合える「通いの場」の充実がますます求められていきます。
それには特別なことをしなくても、誰もが好きなこと得意なこと(≒趣味)への取り組みやすさや、従来からある地縁(≒町内会)に基づいた活動を支えることだけでも、効果的な介護予防の実現につながっていくのではと思います。(続く)
*4年後に要介護状態になる危険性の低下が統計学的に認められた項目
(他の項目は、その危険性を下げることも上げることもなかった) Kanamori, Kai et al. PLoS One. 2014
(参考)
1.Kanamori S, Kai Y, Aida J., et al. Social participation and the prevention of functional disability in older Japanese:the JAGES cohort study. PLoS One 2014 Jun 12;9(6):e99638.
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